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by seagull_blade

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山桜と上弦の月

敷島の大和心を人とはば朝日に匂ふ山桜花(本居宣長)
江戸後期の代表的知識人である本居宣長が、還暦の際に詠んだとされる句である。我々日本人にとって「花」といえば「桜」のことである。いつの頃からそうなったかは、筆者は寡聞にしてしらないが、江戸時代末期の品種改良によって生まれたソメイヨシノに限らず、平安の昔からの常識であったようである。
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さて、先日、私が稽古させて頂いている居合流派(水鴎流)の「合宿講習会」があった。異動となって無暗に忙しくなってきたが、そこはそれ、お客様との調整を済ませれば、割と自由にお休みの頂ける営業担当者である。喜び勇んで伊豆高原へお邪魔した。

稽古でご一緒させて頂いている方の車にて東名高速を名古屋方面へ移動する。すでに東京では桜は散ってしまっていたが、伊豆高原へ向かっているため、海抜が上がれば上がるほど、桜の花が残っていた。車中より花見をしながら、合宿所へ向かう。合宿所は山の中にあり、昼食を済ませた後、直ぐに講習会の開始と相成った。

集まった人数は凡そ70名。遠くはアメリカからも熱心に稽古されている方がいらっしゃり、筆者のいる東京組は「遠いなあ」という言葉を飲み込んだ。稽古場に出てみると、金髪碧眼の女性や、アラブ系と思われる、見上げるような大きな男性もいらっしゃる。年齢層もばらばらで、参加された最長老クラスの方は79歳、最年少は高校生位だろうか。居合を稽古させて頂いてから、本当に様々な出会いに恵まれている。性別、年齢は勿論、出身地も母国語も違う方々や、居合を通して以外に知合うべくも無い方々と共に汗を流すことができる。

宗家を始め、本部道場の方々の主催であったので、初めて間近で高段者や指導員の居合を拝見しつつ、ご指導いただいた。何しろ思い知ったのは「自分が如何に下手であるか」という事であった。忙しいとは言え、それなりに稽古しているつもりだったのだが、本部の方々は勿論、外国から講習会にいらしている方々の上手なこと。「あ、これはレベルが違う」そう考えて、偶々同室だった、ある最長老クラスの先生にひたすらついて稽古と指導をして頂いた。

「もっと胸を張れ!」「そうそう!」「どこを見ている!」「斬るべきところを斬れ!」「君のは野戦型だなあ。実戦ならそうなるかも知れないけれど、まず形を美しく出来なければ」
このような感じで、5時間ぶっ通しで稽古をつけていただく。我々は交代交代だが、指導して頂いている先生は70歳を超えていらっしゃる。しかし、厳しい表情のまま、疲れた表情一つせず、稽古をつけている。

既に周囲は夜となり、稽古場の側に咲く桜もひらひらと夜風に舞う。ふと我に立ち返って考える。空に月は無くとも70振りの刀が、あたかも細い上弦の三日月のように、綺羅綺羅と光っている。「あ、これはTB企画のネタだな」そう思って、暫時ぼおっとしていたのだが、急に背筋が寒くなった。

ここに参加している誰も気にしていないが、いくら広い稽古場とはいえ、70人以上の人間が刀を振り回しているのだ。そして筆者の刀は違うが、多くの人が真剣を使っているはずである。当然のことだが、刃に触れれば皮膚は裂け、血が迸る。刀勢があれば、腕ぐらい両断してしまう。そのことをみな当然として、受け止めている。

かつて、刀槍が実用品であったころ、その使い手たちは己の命が如何に儚く、脆弱なものであるかを良く知っていたであろう。武士であろうとなかろうと、死が身近にあるという状況で、己を例えるとすると、やはり桜に例えたかっただろうと思える。使い古された言葉だが「桜は美しく咲いて、直ぐに美しく散る。」そのギャップこそが、死を常に意識するものの共感を誘ったのではないだろうか。

ほんの少し、一人で或いは練習場で稽古することに慣れてきてしまっていた筆者だったが、この講習会合宿で、今一度緊張感を取り戻すことができた。
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vairousmoon様の「つきのくさぐさ」トラックバック企画参加の記事です。もう東京に桜は無いのですが、許していただけると幸いです。
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お月さまはいつでも空にいらっしゃいますが、
花は盛りのときがわずか。
雪・月・花と並び称される日本の美。
そのうちの2つを、春らしく味わおうではありませんか!

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by seagull_blade | 2005-04-26 18:58 | swordplay