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『男の買物』

a0012892_111016.jpg女性の目から見ると我々男性の買物は非常に不可解であるようだ。勿論、女性の買物だって男から見れば不可解ではあるのだが、概ね女性は買物が好きであるし、モノの売り手だって女性客を想定していることが多いだろうと思う。特に専業主婦ともなれば、買物をする事も楽しみであると同時に、家族の健康管理と家計を同時に考えなくてはいけない立派な仕事であろう。(筆者は独身だが…)

新宿東口から新宿通りと靖国通りの間にある細い道を通って伊勢丹メンズ館にいたる道を「男の買物」という視点で散歩すると意外と面白い。(東京近郊在住以外の方には解りにくくなります。申し訳ありません。)JR新宿駅中央東口の改札を出る。すると目の前にフレッシュジュースや少し前に話題となったメロンパンを置いている店がある。男性客など殆ど見ない。そのまま新宿三丁目方面の地上出口へ向かう。その途中にCDや雑貨を扱う、洒落た店が最近開店したがこれもまた男性客は若い「ファッショナブル」な少数だけだ。階段を上り地上出口を抜けると「メガネスーパー」がある。ここは男性客も多い。しかしメガネスーパーで実用的なメガネやコンタクトを購入することは女性からみて「不可解」ということはないだろう。(筆者は眼が未だに良いので、あまりよく解らない)

雑居ビルを通り過ぎ右手に「コムサデモード」一色のFIVE FOXビルがある。ここも女性客が中心で、男性客もセカンドラインの常識的な金額のものが中心なので普段使いの衣類を買うくらいだろう。(筆者は身体のラインとコムサのラインが合わないので基本的に購入しない)更に行くと「さくらや東口駅前館」「ヨドバシカメラ東口駅前店」が並んでいる。同業他社の店舗が携帯電話顧客の獲得合戦を繰り広げている。このあたりから「男の買物」の雰囲気が漂ってくるが、所詮は家電量販店。「新規・機種変今ならお徳ですよ~!」という声を尻目に新宿通りを横断する。

「みずほ銀行」の横を左に折れると右手に「バーニーズ・ニューヨーク」が見えてくる。男の買物がファッションへ執着を見せるとこの店は外せない。女性客が中心だが、紳士服もそれなりに充実している。若く姿の良いドアボーイに入り口を開けて迎えられ、店内を散策。さて、「バーニーズ・ニューヨーク」知っている方には無用の説明だが、一言でいえば「とんでもなく高い!。」20万から下のスーツは無いのではあるまいか。在ったとしてもそれを買うならバーニーズである必要はない。歌舞伎町のホストでも相当稼がないとここでは買えないだろうな等と思いながら、結構、サラリーマン風の男性客が購入しているのを見かける。センスはさすがに良いがネクタイも靴も高額なので冷やかしながら何も購入しない。ファッションマニアの男性なら100万~200万ぐらい30分で使い切るだろう。(筆者は女性へのプレゼント用でスカーフしか買ったことが無い…)
伊勢丹メンズ館へ向かうならバーニーズの角をすぐ左折なのだが、不可解な「男の買物」に含まれるだろう店が10m先に見えるので曲がらずに一寸だけ直進。すると「クロサワ楽器」がある。筆者はエレキベースを弾くのでついつい地下のベースフロアへ。8畳程度の店内にベースが常時60本程度並んでいる。プロでもなくアマチュアとしても下手な部類に入る筆者だが、既にベースは3本・ギターなら10本程度家にある。この上、何が必要なのだろう。冷静に考えるとそうなのだが、「良い楽器が20万くらいなら買ってしまおうかな」という悪魔のささやきが常に聞こえている。大して稼いでいる訳ではないので20万の何も生産しない出費は大打撃である。しかし「Fender Jazz Bass」や「Precision Bass」の魅力は海より深い。

サイレンの歌声のような楽器の魅力を振り切って店を出たら、先ほどのバーニーズ横を東へあるく。すると「さくらやパソコン館」がある。パソコンが家電となり不可解というほどでは無くなったが、やはりここも「男の買物」という点では一見の価値があるだろう。特に3階(だったと思う)のPC部品コーナーはマニアックな男を結構見かける。ある時、見たことのあるオヤジがパソコンのカバー(筐体という)を見ながらぶつぶつ言っていた。「美しい」とか「これは造りが良くないな」…よく見ると筆者の上司だった。怖いので声もかけずそそくさと店を出る。パソコンを自作するのが趣味なのだろうが、筐体の美しさ(スタイリッシュということではない)までこだわりを持つのは男性特有の心理である気がする。

さくらやパソコン館を出てアドホックビルと紀伊国屋ビルの間を抜ける。すると女性の考える「男の不可解な買物」でも最も不可解な玩具が大量に置いてある「さくらやホビー館」が右手に構えている。店の前には新しいゲームのデモバージョンが設置され、試用できるので結構人が集まっている。流石にサラリーマン風の男は見かけないが、やはり男性ばかりだ。2階・3階はそれぞれプラモデルとモデルガン・鉄道模型のコーナーとなっており、ここにはいい年をしてスーツをきた男たちが主な客層である。実際、モデルガン/エアソフトガンは2万円前後が主流なので子供が小遣いからひねり出すにはちょっと高額すぎる。とはいいながら、筆者も一時ハマっていた。
2階にはロリコンフィギュア(平気で7・8万!)も置いてあり、一種秋葉原めいた空気が流れる。理解に苦しむが、オタク論は別に置いておくとして、これもやはり男性特有の買物なのであろう。

更に奥へ進むとゴールの「伊勢丹 メンズ館」が鎮座している。2003年9月にリニューアルされ、売上を前年比20%以上の増加させている店舗である。かつては巨大な紳士服売場の雰囲気だったが、現在では前述のバーニーズ・ニューヨークのようだ。だが、ファッショナブル・ピープルだけでなく、徐々に「普通の」男性客も多くなってきている。スーツと楽器とモデルガン…男性の買物は何処までも妄想的である…。
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by seagull_blade | 2004-06-21 11:08 | bizarro life
a0012892_115619.jpg前回は顧客・購買情報収集の入り口としてのPOSシステムについて紹介した。情報分析を切り口とするのは今回で終わりとしたいので、もう少しお付き合い願いたい。

さて、大きな意味での消費者とは何であろうか。定義してみると「対価を支払い、最終的に商品を使用する、若しくはサービスを受ける個人/法人」となるだろう。小売業においては「商品を購入して使用する個人/法人」である。小売業態はコンビニ・スーパー・百貨店など様々あるが、どの業態であれ利益を上げる為には「顧客を創り出す」ということが至上命題となる。消費者と顧客は似ているが異なる概念である。英訳するとわかりやすいかもしれない。消費者は「customer / user」となる。端的に買う人・使う人というニュアンスだ。では顧客はというと「account / client」である。こちらは依頼者とも訳せ、より売り手に何かを期待しているというニュアンスが込められている。言い換えると消費者は「一見さん」を多く含むが、顧客は「リピーター」ということになる。当然、売り手にとっては多くのリピーターを抱えるほうが一見さんよりも確実に売上を見込むことが出来る。小売企業が割引優待やポイントバックをしてまで顧客情報を収集し分析する目的は「消費者から顧客へと変換する或いは抽出する」為であると言える。

では具体的にどのような分析を行うのであろうか。ある程度の規模をもった小売企業では情報分析を「販売促進業務」の一環と位置付けている。(勿論その上位には「経営戦略」がある)販売促進活動は「ダイレクトメール」「広告・折込チラシ」「TV・ラジオCF」「サンクスレター」等が上げられるが、例えば「ダイレクトメール」を闇雲に送りつけても一定以上の効果(訴求率と呼ぶ)を期待することはできない。セールなどの催事を行う際、告知用DMを出した場合、一般的にDMの訴求率は3-6%程度である。要するに100人に出した場合は3-6人程度しか来場しないという計算になる。しかしこの数字は顧客情報を分析しターゲットを絞った結果であり、無作為に出した場合は一人もこないということは容易に予測できてしまう。

まず、DMの場合、顧客情報の内、購買履歴に着目する。購買履歴を分析する手法としては「購買分析」「買い回り分析」「クロス分析」などが上げられる。このうち購買分析については第1回で取り上げたRFM分析なので割愛させていただき、「買い回り分析」「クロス分析」に要点を絞って紹介する。

「買い回り分析」は読んで字の如く、ある特定の買い手が商品をどのように比較しながら買物するかを分析する手法である。例えば「自分の洋服を購入した既婚女性がついでに配偶者の紳士用品を買っていくことが多い」という仮説を立てる。そこで、情報分析システムを利用して、「あるブランドの婦人服を買った人でその日の内に紳士靴下を購入した人数を抽出するという分析」を行い、仮説が正しいかを検証する。仮に仮説が正しいとすると買い手が女性であっても「紳士用品のセール」告知DMを出すということも考えられる。或いは「特選婦人服+紳士用品」というようなDMをデザインするという方法も取ることが出来る。こうすることで、そのDMや広告媒体の訴求率(訴求力)をより高くしていく手法が「買い回り分析」である。

「クロス分析」はエクセルのようなマトリックスをイメージすると解り易い。縦軸と横軸を取り、それがクロスするデータを抽出するやり方である。例えば2004年5月中にある百貨店のAブランド婦人服を購入した人の年代はどうなっているのかを分析するには、まずある百貨店の2004年5月の購買情報を抜き出す。このデータから縦軸をAブランドの商品、横軸を年齢(例えば5歳毎のピッチ)で抽出する。すると5月におけるAブランドの商品・購買年齢層相関図ができあがる。この集合をさらに「住所」を使用した「商圏分析(どの地域に購買層が多いか)」などにかけるなどして、最も効果が上がるようにDMや折込チラシ広告を実施する。

情報分析システムは購買者を一般客から最重要顧客までを階層分けし、それぞれの潜在的欲求を仮説を元に分析し、予想するために考え出されたものである。その仮説に従ってあらゆる広告が考えられ、作られている。
「軍の指揮官にとって、最も重要な資質はなにかと問われれば、想像力である、と答えよう。この資質の重要性は、なにも軍の指揮官にかぎらない。いかなる職業でも、想像力なしにその道で大成することは不可能だからである 『マキアベリ:戦略論』」
マキアベリのこの指摘は小売業にとっても真理であろうと思う。特に販売促進取分け潜在顧客の顕在化という作業においては最も重要なポイントであろう。

次回の「小売とマキャベリズム」は顧客情報から離れ、別の切り口で展開しようと考えています。よろしくお付き合いください。
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by seagull_blade | 2004-06-15 11:57 | career
a0012892_214533.jpg日本経済が回復基調にあるそうだ。実感としてはさほどではないが、「政府発表は詐術だ!」と言うほど不景気だとは思わない。確かに少し回復している。新宿のタクシー待ち行列が3・4年前よりも確実に長くなっているし、モノが売れないといっても差別化に成功した商品はかなり高額でも売れている。例えば「デジタル家電三種の神器」の一つDVDレコーダは10万円前後の製品にもかかわらず、飛ぶように売れている。(アテネ五輪の前だからだが…)2004年の国内販売予想台数は360万台(日立製作所調べ)である。ただ、「差別化」という点がバブル期と違う。百貨店で買物をする人、100円ショップで買物をする人が同じであるという点が、現在の景気の見極めを難しくしていると思う。
失われた10年といわれた90年代より、日本経済はようやく目覚めつつあるというのが諸外国の評価であるらしい。しかし「実感としてさほどではない」のはなぜだろうか?

2003年、日本のリーディングカンパニートップ300社の利益率25%は上位5社によって占められているという。(Business Week調べ) 利益率は即ち生産性である。ということは上位5社の生産性は抜群だがその他の企業はまるでなっていないということになる。生産性の向上はリストラクチュアリングの大きな柱であったはずだ。実際には「restructuring」ではなく、多くの企業で「リストラ」という名の首切りが行われただけで生産性など向上せず、残ったメンバーが残業などで業務を回しているというのが現状なのだろう。サービス残業を含めるとトップ300社でも実際の利益がどの程度出ているのかは疑わしい。しかもこれは大企業に限った話である。

日本の就労人口の内60%が務める中小零細あるいはハイテクノロジー・自動車産業以外の企業は依然として厳しい状態に置かれている。筆者はかつて「日刊不渡りドキュメント」というメールマガジンを受信していたことがある。具体的には勿論書くことは出来ないのだが、毎日相当数の中小零細企業が不渡りを出し倒産している。景気は回復基調にあるとはいえ、やはり濃淡が激しい状況である。因みに日本の平均所得水準はアメリカより30%程度劣ると言われている。

突然話が変わるのだが、「自由である」というのはどういうことであろうか。筆者が学生時代に読んだ、心理学者のエーリッヒ・フロム(Erich Fromm)の著作「自由からの逃走」に(あまり明確に覚えていないのだが)「自由とは無限の可能性ではあるが同時に無限の不安である」という趣旨を書いていた。「全くの自由」に人間は耐える事ができないのだと。日本経済のというより日本人の商売が行き詰まりをみせる時、この「自由」という概念をどのように捉えるかが最大の鍵であると筆者は思う。フロムが主張したように自由(FREE)とは「無い」という言葉と同義であり、実際英語においては同一の単語を使う。日本語で自由とすると「制約が無い」というニュアンスが強いが、「保証が無い」というニュアンスは殆ど含まれていない。

経済の競争相手としてのアメリカは実態はともかくとして「FREE」を国是としている。勿論「制約も保証もない」というの意味での自由である。「自由の国アメリカ」を「制約も保証も無い国アメリカ」と捉えなおせばより明確になるかもしれない。すると経済力における彼我の差の根本的原因がここにあると筆者は思う。

先に断っておくが、筆者は個人事業主の息子として生まれ、地元の商店街に愛着のある人間のつもりである。それ故にアメリカ式自由競争に諸手を挙げて賛成することなど出来ない。外資系コンサルタントやビジネススクールで出会った講師たちのように弱肉強食を安易に是とすることにはどうしても違和感がある。

さて、「自由の国」アメリカのホワイトカラーは日本のホワイトカラーの数倍は働くと言われている。実際、筆者が付き合いのある某外資系大手SIベンダーで働くSEやコンサルタント達は、筆者から見ても「ちょっと真似できない」位によく働く。また別の外資系大手コンピュータメーカに勤めている筆者の会社OBは30代半ばで年収が1500万だそうだが年間で3-4日しか休暇を取らない。取れないのではない。取らないのだ。また、彼等の働きぶりで特徴的なのは「集中している」ということだ。筆者のように仕事の合間にブログを更新する事などありえない。あるとすれば業務の一環である。また彼等は新しいスキルにすぐ飛びつく。情報も早い。「馬鹿は最初に走り出す」と茶化したくなるぐらいに。

なぜそれほど働くことができるのか。或いは向上心を持ちつづけることができるのか。答えは勿論「自由」だからである。今日の制約も無いが明日の保証も無いからである。彼等は日本企業では考えられないほどの緊張と不安の中で仕事をしている。アメリカでサラリーマンは「気楽な稼業」ではない。ボンヤリとしていれば、すぐに自分の仕事をアウトソースされクビになってしまう。日本の大企業のように「彼には家庭があるから」「誰にでも生活があるから」とは決して考えてくれない。(それ故に精神疾患が日本よりも遥かに多いと聞く。ティーンエージャーではなく20代~50代だ。)これらの不安(恐怖というべきか)が生産性を向上させる根本的な原因であると思う。

「泳ぎつづけなくては死んでしまう」マグロのような仕事を日本人は拒否する。だがそれ故にrestructuringは進まず、生産性は向上しない。サラリーマンにおいては会社がイコール生活の場となっている人も多いだろう。筆者もまさにそうである。だが「自由からの逃走」を続ける限り、長い眠りは終わらないと思える。社会主義的でもなく、アメリカ的でもない「自由との闘い方」は無いのだろうか。恐らくないのだろうが…。
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by seagull_blade | 2004-06-10 21:46 | philosophism
a0012892_131941.jpgニコロ・マキアベリ(1469-1527)はルネサンス期のフィレンツエ共和国外交官である。彼は『IL PLINCIPE(君主論)』に代表される著作の中でユニークな政治思想を論じている。「目的が正しければ手段は常に正当化されるのである(君主論)」など一種の性悪説・悪の肯定ともとれる論考を行い、政治(手法)と倫理を切り分けて論じた。その為「マキャベリズム」は理想主義の対極に位置するものとされ、プロイセン王フリードリヒ2世の「アンチ=マキャベリズム」を始めとして悪の政治の代名詞として非難されて来た。アメリカなどは自らの政治を「アンチ=マキャベリズムの伝統」などと称している。(笑止千万)

だが現実に多くの物事がマキャベリズムで動いている。「どのようにすれば最大の効果を上げることができるのか?」「どのようにすると最悪の結果を招いてしまうのか?」ということを倫理・道徳を含めたあらゆるしがらみから自由に考えることそのものがマキャベリズムだからである。さて、このシリーズは流通業界とITなので、マキャベリの話は他に譲って本論に入りたいと思う。

前回はパレートの(2:8)法則、CSM(顧客階層分マーケティング)、RFM指標をキーワードとして小売業界でのカード(クレジット・ポイント)戦略の簡単な紹介を行った。今回はPOSシステムを中心として顧客情報収集の具体的な方法を紹介したい。

POSシステムはPoint Of Sales system の略称であり、「販売時点管理システム」などと訳されることもある。一般にPOSレジと呼ばれるコンピュータ化されたレジスターはこの「POSシステム」の一部である。レジの歴史は意外と古く、日本においては明治33年(1897年)に横浜の貿易商である牛島商会がアメリカのナショナル・キャッシュ・レジスター社から輸入したのが最初とされている。同社は後にNCR社となり、現在でも百貨店を始めとして多くの小売業界でその製品が使用されている。POSレジはこれらレジスターとコンピュータを組み合わせ、商品を店頭で販売する毎に商品の販売情報を記録・集計する為の最初の入り口(インターフェース)となるものである。

POSレジで入力された情報は、オンラインでサーバ内のデータベースへ記録される。POSレジで収集できる情報は多岐にわたる。「商品情報」の他に、「購買金額」「時間帯」「店舗」「売場」「販売担当者」などが現金や金券で顧客が買物をした際に掴むことが出来る情報である。だが、これだけでは「誰が買ったのか」は解らない。そこでクレジットカード情報やポイントカード情報を組み合わせてみる。すると先ほどの情報に加えて「個人名」「性別」「年齢」「住所情報」「電話番号」「家族構成」などを得ることが出来る。すると最初の情報である「商品情報」から「商品種別」「ブランド」「サイズ」などが意味を持ち出す。個人が特定できればその顧客の嗜好や買物パターンを分析することが可能になる。これだけの情報を得ることができるなら、ある程度の規模をもつ企業であれば、ポイントバックやカード優待など安いものである。最近では「e-mailアドレス」もこれらに加えて良いかもしれない。

クレジットカードやポイントカードの入会時に「ご入会伝票」のような物へ「住所情報」や「電話番号」「家族構成」などを記入したことがある方も多いだろう。これらの情報もすぐさまデータ化されデータベースに取り込まれる。そしてそれらを利用して買物をすると小売側は上記のような情報を収集することができ、分析することが可能となる。こうした個人を特定して分析しマーケティングすることを「One To One マーケティング」と呼ぶ。One To Oneなどと呼べばなんとなく聞こえは良いが、買物を楽しんでいる際にこうした情報が自動的に集計されていると考えるとなかなか不気味ではある。

こうして収集された購買情報・顧客情報を元に前回紹介したRFMなどを利用して様々な切り口で顧客の階層化(セグメンテーション)を行う。セグメンテーションの過程がまさにCSMと呼ばれるのである。

これらの情報を利用してTVCFやチラシ・ダイレクトメールなどの宣伝活動、商品買い付け、仕入れなどのマーチャンダイジング(MD)をより効率化していくのである。POSシステムはそれらの入り口という点で小売システムの中で最も重要なシステムである。それ故にIT化の遅れている小売業では「まずPOSから」の導入が常識となっている。勿論上記のような情報系と呼ばれるシステム以外にもレジスターとして金銭の出納・集計・精算・営業日報の作成などさまざまな基本的な機能(基幹系と呼ぶ)もPOSシステムは支えている。

次回は集められた情報をどのように分析してその後の販売に生かすのかを筆者の知っている範囲で紹介してみたい。
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by seagull_blade | 2004-06-08 13:20 | career
a0012892_194547.jpgここ4、5年ポイントカードという仕組みをよく耳にするようになってきた。大手家電量販店やレンタルビデオ、マイレージなどのポイントバックやキャッシュバックの優待を受けることが出来るアレである。また、特定のクレジットカードを利用すると割引優待が受けられるサービスもハウスカードなどを持っている百貨店などでよく見かける。利用している側としては一種の顧客還元の一つと考えている方が多いだろう。決して間違いではないが、ただそれだけのことではない。少し企業側の思惑について記してみたい。

「2:8の法則」という言葉をご存知だろうか。イタリアの経済学者パレート(Vilfredo Pareto 1848-1923)がパレートの法則として提唱した考え方である。マーケティング用語としてよく出てくるが、要するに「重要なものは僅かしかない」という考え方である。本来は所得分布を説明するもので、上位2割の所得者が全体の所得の8割を占めるという一種の経験則なのだが、現在では所得以外でも応用可能と考えられ様々な分野のコンサルタントや販売促進でも利用されている。

例えば、「ある企業の営業部門の成績を説明する場合、営業成績上位2割の人間が売上全体の8割を占めるが、仮にこの2割を別の部署に移動させたとしても残された営業部門でまた2:8の法則が働き、2割が成績を伸ばし売上全体の8割を占めてしまう。」などとまことしやかに語れる便利な言葉である。

流通業界、取分け小売業界においては「2:8の法則」は顧客の切り分けに多く用いられる。勿論「2割の顧客が全体の8割の売上を占める」という考え方である。そもそも経験則なのだから厳密には疑わしい部分があるが、ある程度の信憑性は持っていると考えられる。特に高額商品を扱う小売になればなるほどこの法則に支配される傾向があるといえる。この考え方に基いて企業は顧客分析を行う。これをCustomer Specific Marketing(CSM)と呼ぶ。顧客による売上貢献度から顧客のランクを決定し、それぞれの階層毎にアプローチの方法を変えることでより効率的に売上を上げようとする試みである。ではどうやって階層を分けていくのであろうか。

流通小売業界では古典的な切分指標としてRFMという基準を用いることが多い。Rはrecency : リーセンシーで、最近の購入であるかどうか。Fは frequency : フリークエンシーで、頻度はどうか。Mはmonetary-value : マニタリ・バリューで、購買金額がどうかということである。これらを例えばポイント制にして顧客ごとに設定し、その総和をランク付けすることで顧客の階層化分析を行うことが可能になる。また取扱商品や業種によって、RFMの内、それぞれの重要な項目に重み付けを行い(例えばそれぞれの通常最大値を5とし、重みを2とすると、3ポイントの顧客は5ポイント、5ポイントの顧客は7ポイントとなる)応用して分析する。つまりこれらの頻度が高ければ高いほどCSMにおける上位層とランクされるということである。

更にRFMはどの指標ポイントが高いかでどういう顧客なのか詳細に分析できるが、ここはマーケティングのブログではないので割愛させていただく。ご興味のある向きは「RFM」をキーワードにして検索していただくと山ほど引っかかる(Googleの日本語ページで凡そ3,800件)ので、参考にしていただきたい。

RFM指標に基いたCSM分析は上述したようにある程度古典的な手法であり、かつては膨大な顧客データを「大福帳」として帳面に付け、手計算や大雑把な経験と勘を用いて利用していたが、こうした分析がIT/コンピュータが得意とする分野であるのはすぐに想像できるであろう。データ入力さえ行えば、上記の計算システムはさほど複雑ではない為すぐに実現可能である。現在主流の顧客分析システムパッケージソフトではCSMをCRM(Customer Relationship Management:顧客関係性マネジメント※次回以降詳説)と絡めて販売していることが多い。それらは多くの機能を既に用意してあるのだが、導入時に必ず問題になることがある。それはどうやって顧客データ(個人データ・購買データetc)を入手・入力するのかという事である。

冒頭に記したポイントシステムやクレジットシステムはここに繋がってくる。ある程度の出血を覚悟してでも自動的に会員データが溜まり、加工可能な状態を現出することの出来るカードを利用したシステムはどうしても小売が欲しい情報なのだ。これらの集められた情報はCSMやRFMに使用されるだけでなく、様々な企業活動に使用される。次回からはこうしたデータを具体的な収集方法、更にどのように活用するかを概説してみたいと考えている。


※『革命と反動』と題してきた流通業界とITシリーズは今回より『小売とマキャベリズム』シリーズとして作成したいと考えているので宜しくお付き合い下さい。
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by seagull_blade | 2004-06-04 19:46 | career
a0012892_134445.jpgIT革命という名のバブルが弾けて久しい。IT革命などと書いたが、それはやはり未知の技術に対する過度の期待とアメリカへのキャッチアップしなくてはという脅迫観念が生み出した流行であった。ITという言葉、コンピュータに対する理解がある程度一般化したことが「IT革命」における殆ど唯一の成果だったと筆者は考えている。

IT革命が仮に流行であろうとも、かなり巨額のシステム投資が(闇雲と言って良い程の感覚で)なされた。「ITガバナンス」という言葉がある。1999年頃から使われ始めた言葉で、一言で言えば「経営戦略に沿ったITを活用するメカニズムを企業内に持つ」ということである。便利かつ包括的な言葉で企業においてコンピュータ・システムを扱う際に出てくる問題は、純粋に技術的な問題を除いて、大抵この「ITガバナンス」というカテゴリに含まれてしまう。

ITをイット読んで森元首相が失笑を買ってしまった2000年から2001年にかけて国内におけるシステム投資額は「2000年度より増やす企業が57.6%に上った(日経マーケットアクセス調べ)」であった。翌年(2001年度)は44.1%となり減少傾向となっている。丁度、このあたりから「ITガバナンス」が人口に膾炙し始めた。言い換えれば「費用対効果」が果たして出るのかということが問題となってきたのだ。(但し、2007年問題等を睨み大企業を中心にIT投資はこの2年増加傾向にある)投資された巨額のIT予算が果たして効果を上げているのか、もっと言えば「何処に消えてしまったのか?」と考え始めたと言える。ここから一種の反動が始まった。キーワードはやはり「ITガバナンス」だろう。

多くの人材を抱える大企業はともかく、日本経済の中核を担う大多数の中小零細企業にとって回復基調にあるとはいえ、出来る限りのコスト削減を行い、生き残りを図るしかない状況となっている。こうした背景の中、経営者にとっては費用対効果が明確でないITは出来る限り避けなくてはならない投資と考えられているようだ。

一般に不況時には「3つのK」という削減可能な予算が真っ先に削られる。広告宣伝費・教育研修費・交際費がそれにあたる。筆者の勤め先もご多分にもれず、交際費など「何を言われるか恐ろしくて」総務や経理に申請など出来ない空気が出来上がっている。ITに対して理解を深めている暇などない(情報リテラシーの無い)経営者にとってみれば、IT投資も削減可能な予算の中に含めたくなるのは解りきったことである。確かにもはやITは企業インフラの一部であることが多く、もはやそう簡単に切り捨てるわけには行かない。だが、上述したように費用対効果(例えばROI)が見えにくいこと、さらに経営層にとっては決裁した際に予想していたよりもずっと金の掛かるものだということ等から、IT投資は控えめにとなっているようだ。良くある話だが、パソコンだけではなく、OSやソフトウェアのアップグレード、回線費用などランニングコストを多めに見積もっておかない限り、ひたすら追加予算が発生してしまう。また、簡単な(経営者にとっては)システムをSIベンダーに見積もらせたところすぐに数千万円から億単位になることもざらである。

流通業界においても事情は同じである。情報化が最も遅れた業界の一つではあるが、筆者のいる百貨店系に絞ってみると「情報システム部門」が存在しない百貨店は殆ど無い。どの百貨店においても情報システム部門は経営管理系の部門に近い位置にある。だが、CIO(Chief Information Officer)をおいている企業は少ないし、現在の経営層が情報システム部門をややもてあましているのが現状ではないだろうか。つまり、情報システム部門の挙げてくる問題や追加予算請求に対して、経営層は判断しきれずに二の足を踏んでいるという構図が出来上がっているのである。

こうしたことは真新しい指摘でもなんでもなく、ここ3・4年よく言われている話である。だがこうしたことが叫ばれつづけているということは、解決されていないというのが本当のところであろう。つまり専門家としての情報システム部門だけがITガバナンスにかかわり、経営層の目指す企業統治(コーポレート・ガバナンス)との整合性が取れていないということが、目下解決すべき最大の問題であると筆者は認識している。早い話が「そのIT投資は本当に必要なの?役に立つの?」という事を経営層が理解するのは難しいということである。

この問題は恐らく時間とともに解決されるだろう。経営層が入替り、多少なりともITに若い頃から触れている人間が主導権を握ればおのずから解消される。だが、そんな物を待ってしまっていては今ある会社の経営に深刻なダメージを受けるかもしれない。

筆者が考えるこの問題の解決方法だが、大企業・中小企業を問わず、SIベンダーからある程度経験を積んだ若手の引き抜きや中途採用を行い、情報システム部門に回すのではなくまず現場(ライン)に放り込んでみるという手は如何だろうか。経営者にはSIベンダーのような給料を出せない、或いはシステム屋などモノを売る現場、作る現場では役に立たないだろうという心配があるであろう。だが、さほど心配は要らないと筆者は考える。まず給与面だがSIベンダーの多くははっきりと薄給である。確かに大手SIベンダーなどでは20代で1000万円近い年収を得ているものもいる。だがそれは例外で、多くの場合一般的な企業と同じレベルである。また、SIベンダーの中でも実際の開発作業(プログラミング)を行う中小零細企業ではかなり低い賃金で働いているプログラマーも多い。また、後者については「IT系の人間はコミュニケーション能力が低い」という偏見だろう。確かにこれは当たっていなくも無い。筆者の周囲にも「こりゃ客先には出せないな」という人間は少なくない。だが、どちらかといえば実際の業務まわりや顧客との折衝に興味はあるがシステム開発部門だから機会がないという人間の方がむしろ多くいるように筆者には思える。ある程度の待遇を保証して「商売の現場」での修行の場を提供してもらえるならば、経験してみたいと考えている若手は決して少なくないであろう。

こうして獲得し「修行」させた人間を情報システム部門や経営部門に引っ張り込むのだ。そこでまた経営層の考え方を理解した時、彼等・彼女等はプログラマやSEからプランナや上級SEとなっているのではないか。そしてSIベンダーはこうした人間をまた再獲得すればよい。商売とITを理解している貴重な人材となっていることであろう。特に中小企業で働いていた者は大企業には無い強烈なコスト意識をもつこともできる。彼等・彼女等は真の意味での「ITガバナンス」を行っていける可能性があるだろう。

筆者の意見はとても楽観的であることは承知している。こうしたことがそう簡単に成功したり、一般化したりするとは思えない。だが、挑戦してみる価値は充分にあるのではないだろうか。ITコンサルタントに分析を依頼するよりもリスクは高いがかなり安価に実行可能であるし、これからは人の流動化は避けられない課題であるのだから。
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by seagull_blade | 2004-06-02 13:45 | career