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by seagull_blade

流通業界とIT。『小売とマキャベリズム3』

a0012892_115619.jpg前回は顧客・購買情報収集の入り口としてのPOSシステムについて紹介した。情報分析を切り口とするのは今回で終わりとしたいので、もう少しお付き合い願いたい。

さて、大きな意味での消費者とは何であろうか。定義してみると「対価を支払い、最終的に商品を使用する、若しくはサービスを受ける個人/法人」となるだろう。小売業においては「商品を購入して使用する個人/法人」である。小売業態はコンビニ・スーパー・百貨店など様々あるが、どの業態であれ利益を上げる為には「顧客を創り出す」ということが至上命題となる。消費者と顧客は似ているが異なる概念である。英訳するとわかりやすいかもしれない。消費者は「customer / user」となる。端的に買う人・使う人というニュアンスだ。では顧客はというと「account / client」である。こちらは依頼者とも訳せ、より売り手に何かを期待しているというニュアンスが込められている。言い換えると消費者は「一見さん」を多く含むが、顧客は「リピーター」ということになる。当然、売り手にとっては多くのリピーターを抱えるほうが一見さんよりも確実に売上を見込むことが出来る。小売企業が割引優待やポイントバックをしてまで顧客情報を収集し分析する目的は「消費者から顧客へと変換する或いは抽出する」為であると言える。

では具体的にどのような分析を行うのであろうか。ある程度の規模をもった小売企業では情報分析を「販売促進業務」の一環と位置付けている。(勿論その上位には「経営戦略」がある)販売促進活動は「ダイレクトメール」「広告・折込チラシ」「TV・ラジオCF」「サンクスレター」等が上げられるが、例えば「ダイレクトメール」を闇雲に送りつけても一定以上の効果(訴求率と呼ぶ)を期待することはできない。セールなどの催事を行う際、告知用DMを出した場合、一般的にDMの訴求率は3-6%程度である。要するに100人に出した場合は3-6人程度しか来場しないという計算になる。しかしこの数字は顧客情報を分析しターゲットを絞った結果であり、無作為に出した場合は一人もこないということは容易に予測できてしまう。

まず、DMの場合、顧客情報の内、購買履歴に着目する。購買履歴を分析する手法としては「購買分析」「買い回り分析」「クロス分析」などが上げられる。このうち購買分析については第1回で取り上げたRFM分析なので割愛させていただき、「買い回り分析」「クロス分析」に要点を絞って紹介する。

「買い回り分析」は読んで字の如く、ある特定の買い手が商品をどのように比較しながら買物するかを分析する手法である。例えば「自分の洋服を購入した既婚女性がついでに配偶者の紳士用品を買っていくことが多い」という仮説を立てる。そこで、情報分析システムを利用して、「あるブランドの婦人服を買った人でその日の内に紳士靴下を購入した人数を抽出するという分析」を行い、仮説が正しいかを検証する。仮に仮説が正しいとすると買い手が女性であっても「紳士用品のセール」告知DMを出すということも考えられる。或いは「特選婦人服+紳士用品」というようなDMをデザインするという方法も取ることが出来る。こうすることで、そのDMや広告媒体の訴求率(訴求力)をより高くしていく手法が「買い回り分析」である。

「クロス分析」はエクセルのようなマトリックスをイメージすると解り易い。縦軸と横軸を取り、それがクロスするデータを抽出するやり方である。例えば2004年5月中にある百貨店のAブランド婦人服を購入した人の年代はどうなっているのかを分析するには、まずある百貨店の2004年5月の購買情報を抜き出す。このデータから縦軸をAブランドの商品、横軸を年齢(例えば5歳毎のピッチ)で抽出する。すると5月におけるAブランドの商品・購買年齢層相関図ができあがる。この集合をさらに「住所」を使用した「商圏分析(どの地域に購買層が多いか)」などにかけるなどして、最も効果が上がるようにDMや折込チラシ広告を実施する。

情報分析システムは購買者を一般客から最重要顧客までを階層分けし、それぞれの潜在的欲求を仮説を元に分析し、予想するために考え出されたものである。その仮説に従ってあらゆる広告が考えられ、作られている。
「軍の指揮官にとって、最も重要な資質はなにかと問われれば、想像力である、と答えよう。この資質の重要性は、なにも軍の指揮官にかぎらない。いかなる職業でも、想像力なしにその道で大成することは不可能だからである 『マキアベリ:戦略論』」
マキアベリのこの指摘は小売業にとっても真理であろうと思う。特に販売促進取分け潜在顧客の顕在化という作業においては最も重要なポイントであろう。

次回の「小売とマキャベリズム」は顧客情報から離れ、別の切り口で展開しようと考えています。よろしくお付き合いください。
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by seagull_blade | 2004-06-15 11:57 | career