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by seagull_blade

Matrix

転職から4ヶ月が経ち、会社の環境にもようやく慣れつつあるという状況である。「会社の環境」と書いたのは、現在の仕事が完全に「プロジェクト単位」で動く会社であり、常に仕事の仕方は流動的で人員も内容も毎回変わるので、会社に慣れたとは書きにくいからである。こうした組織はマトリックス型と呼ばれる。同じような環境の企業で働いている方にはよくお分かりのことと思うが、ピラミッド型の組織でしか働いたことの無い方も多いと思うので、マトリックス形の組織について説明したい。
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会社組織は大きく分けて「ピラミッド型」「マトリクス型」に分けられる。組織は好むと好まざるとに係わらず、軍隊にその端を発していると考えられ、ピラミッド型が基本形をなしている。即ち、トップ以下それぞれの目的に応じた組織に分け、更にその下に機能別の組織を形成する形式である。軍事的組織ならば、トップ⇒三軍(陸海空)⇒師団⇒連隊⇒大隊⇒中隊⇒小隊⇒分隊であり、会社組織ならば、トップ⇒事業部⇒部門⇒課⇒班が対応しているだろう。組織によって色々異なるが、凡そこのようになるかもしれない。ピラミッド型組織の特徴は、「基本的に直属の上司が一人」であることが上げられる。肩書き(階級)が上の人間は存在するが、そこから斜めに命令が飛んでくることは無い。また、軍隊組織を管理可能なほど、大人数・大規模な組織に対応している。

これに対して、「マトリクス型」という組織がある。大きくは能力とランクで個人を分け、プールしておく。そして、その時々の必要に応じてプロジェクトチームを作り、目的を達成すれば解散して、またプールされるというのが基本的な形である。この「能力×ランク」というのが、「マトリクス」なのであろう。一時期のビジネス書などでは組織の理想形としてもてはやされていたが、近頃はそうした記事を見なくなった。実際にピラミッド型組織で動いてきた組織に、このマトリクス型組織を当てはめようとすると、なかなか機能しないということが解ってきたからだろう。

小中学生の頃に「グループ学習」という授業の経験はおありだろうか?第二次大戦後、GHQによる教育改革の中で取り入れられた手法なので、恐らく読者諸賢も経験があると思うのだが、実はあれが「プロジェクト単位での作業」を日本でも行うための布石だったそうである。社会科見学についてグループ(班分け)単位で「目的と調査内容」を決定し、メンバーのロール(役割分担)を決めて、社会科見学して、レポートにまとめる(プロジェクト遂行)。ここまでの作業は実社会でのプロジェクト遂行の予行演習という訳である。

現在、筆者が所属している企業では殆ど純粋にマトリクス型組織が運営されており、社員をプールしておいて、必要な際に必要な能力を持ったメンバーに対して面接を行い、プロジェクトを遂行し、完了後またプールされるという形で仕事を進めていく。3月に中途入社してから、現在のプロジェクトで4つ目である。プールされた状態から、常に「社内就職活動」を実施して自分でキャリアを形成していくという形式は、他の中途入社メンバーに聞いてみると、さほど違和感は無いということである。やはり外資系、特にアメリカ系の企業では当たり前のようである。しかしコテコテの日本企業から移った筆者にはなかなか新鮮である、というよりも、慣れるまで結構大変である。未だに慣れていないかもしれない。

この種の組織を運用する上では幾つかのポイントがあるようだ。最初のポイントは組織の流動性を高く保つことである。そのためには組織のメンバーそれぞれが自分のキャリア形成プランを少しでも意識し、指示を待つのではなく、自分の身につけたいスキルを得られるような仕事を自分で取りに行くということが当たり前のこととして企業風土に組み込まれていなくてはならない。先日、筆者と同時入社の人が3ヶ月にして辞めてしまったが、自分から仕事を得るための風土に馴染めなかったというのが主な要因であると思える。

2つ目はルールを明確にし、それをできる限り厳格に適用することである。例えば、「プロジェクトへの参加(assign)にしても、プロジェクトのマネージャが任命され、マネージャが必要な人間を社内から探し、面接をして、プロジェクトにアサインする。そしてプロジェクト完了時にはリリースする。評価は参加したそれぞれのプロジェクトマネージャが論議して、相対評価で決定する。」こうしたルールが守られていれば、アサインされる側はそのつもりで仕事ができる。特定の上司に縛られないが故に、あまり好き嫌いで評価が決まるということも無い。此処で恣意的にルールを曲げて、「何某は何某の懐刀」などとやってしまうと、メンバー間にチャンスを得ることについての公正さが失われてしまう。

そして最大のポイント会社は社員とその能力を信用するということだろう。ピラミッド型組織であった前職よりも、現在の方が遥かに仕事に対して要求される質、量ともに高くなっており、かなりきついことも確かだが、期待・信用されていることが判れば、モチベーションも高く保つことができる。マトリクス型組織では責任を上長、そのまた上長と辿って行くことが難しいから、それぞれの社員がクラスに応じた責任を取らざるを得ない。責任には権限も同時に伴わなければ、責任を取る気にもなれないから、やはりクラスに応じた権限も付与される。こうしたことが、社員には信用されているという実感に繋がると筆者は考えている。

メリットばかり書いてきたがデメリットも当然ある。まず、作業を創出できる社員でないとこうした組織とその方法についていけない。毎回毎回、初めての作業となるので、誰も完全に的確な指示を与えることはできないため、指示を待っていても何もできない。新入社員を含め、経験が無い、あるいは適正の無い社員にはこれは難しい作業だろう。
また、同時に毎回新しいメンバーと作業を進めていくことになるが、言い換えればこれはその都度信頼関係を新たに構築しなくてはならないということである。これはコミュニケーション能力に大きく依存するため、作業能力が高くてもコミュニケーション能力に問題のある社員を活用することが難しい。プロジェクト期間は決まっており、最小限の人間しか参加しないため、個々別々のフォローアップも難しい。

更に、会社に対する帰属意識やロイヤリティの問題がある。組織を流動的にすればするほど、横の連帯感や擬似家族的な一体感は生まれようもない。ここからは離職率の上昇や社員の精神衛生上の問題が発生しやすい。どちらも筆者が日々見て、感じていることである。退職挨拶のメールは頻繁に受信するし、相談もどこへ持っていったら良いかわからない。

また、この手の組織形態は大規模な組織での運用が難しい。会社のインフラとして組織運用をサポートするツールが用意され、確りと運用されていることが必要である。例えば、現職の会社では、社内向けのWEBサイトにより、現在の自分のステータスやスキルを登録しておき、それをマネージャがチェックしてコンタクトするというツールの利用方法がルールとなっている。

筆者は、目下のところマトリクス型組織で運営している現職の方が、ドライかつビジネスライクで気分は良い。また、自分のキャリア戦略に実際のキャリアを近づけることも、ピラミッド型よりはずっと容易である。その分リスクも高いのだが、そこはそれ、サラリーマンである限りは、それほど無茶なことにはならない。最悪のケースでもクビになるだけである。(そんなことも滅多に無いが。)もしも読者諸賢の中に、外資系企業などへの転職を考えておられる方がいれば、参考になれば幸いである。
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by seagull_blade | 2006-07-21 11:34 | career