「ほっ」と。キャンペーン

Have a life outside of work.


by seagull_blade

装束。

a0012892_1121492.jpg
居合の話をよく書いているが、装束について書いていないことに気が付いた。日本の武術や華道を習うことの大きな魅力の一つに和装で行うことがあると思う。和服を一度も着た事が無いという方も、特に男性には多いだろう。筆者の周りには「七五三」以来着た事がないというタイプが多い。近年、浴衣ブームであり、ユニクロでも4000円程度で浴衣を売っていたので、浴衣ならという方は割といらっしゃるかもしれない。とは言え、そもそも何処へ和装で行くのか、その必要も機会も普通に生活していると殆ど無いから、和服を着ないという方が多いのではあるまいか。

柔道なら柔道着、空手なら空手着、剣道なら剣道着と防具をそれぞれ着る。では居合にも居合着という物があるのかということだが、これがちゃんとある。防具を付けずに行う居合は、薄手の剣道着のような上着と、長い柔道帯のような居合帯、頻繁に立ったり座ったりするために、通常よりも少し厚手の居合袴がそれぞれ用意されている。これらは一そろい大体20000円程度で武道具屋に置いてあるのだが、実はこれは練習着であって、勿論、普通の和服でも良いし、正式には紋付袴である。実際、古武道大会等などに出場され、演武を行う方の多くは紋付袴姿であることが多い。ただ、着物は高価であることが多いし、練習は割と汗をかいてしまうことを考えると、居合着を着る方が合理的であると思う。居合着は大抵、化繊なので洗濯機でざぶざぶ洗える。

女性もこの格好で行う。居合はやはり男装でなくては帯の位置、着物の形状などから抜刀することが出来ない。しかし、女性の男装袴姿というのもなかなか格好いい。居合着の色は黒・白・紺ぐらいしかないし、袴に至っては黒・紺だけだが、このシンプルさが着る者を「凛」と見せてくれる。

女性の着物で行う武術を探しているならば、薙刀(なぎなた)がある。薙刀は江戸時代、どう言う訳か武門の女性の武器とされてきた。女性の着物特有の振袖を利用した技や、大きくステップを踏めないことを逆用した技など、これも相当に高度な武術である。薙刀は長柄(1.5~2m程度)の先に刀をくくりつけた武器であり、武器として考えた場合、強力なものである。とくに切断の力は刀の比ではない。てこの原理が働いて、柄の先の刀身は刀よりも遥かに高速で振られる。女性の力であろうと、刃がぶれることなく真直ぐ入れば、腕ぐらい骨ごと切断してしまうだろう。勿論、薙刀は男性も行う。江戸時代以前には槍とは用途の違う長柄の武器として実戦に使用された。鎌倉、室町前期の鉄砲伝来以前には主力武器の一つであったようだ。筆者の習っている水鴎流にも薙刀はある。(筆者は握ったことも無いが)男性女性の区別はない。

閑話休題。居合の装束の話である。筆者の場合、男性用の肌襦袢の上に黒の居合着、一般的な角帯に黒袴である。足元は素足。冬場などは冷たいので足袋を履いた方が良いかも知れない。この辺りは古流であれば流派によると思われる。また、筆者は夏場、汗対策に手ぬぐいを頭に被っている。少し大ぶりの手ぬぐいを呉服屋で数枚購入して使いまわしである。最後に、真剣もしくは居合刀を差す。差す位置は左腰、角帯が三重に巻かれている所を外側2枚と内側1枚の間に刃を上にして差す。鎧を前提とした「太刀(たち)」は刃を下にするが、通常は刃を上に、栗形(くりがた)という下げ緒止めを常に左にする。まずはこれで準備完了。

和装の敬遠される点として、帯の巻き方があるかもしれない。男性の帯は女性のそれに比べれば遥かに簡単だが、慣れるまでは一寸面倒なのは確かである。結び方はそう多くは無い。筆者の場合は一番基本的な「貝ノ口」という結び方である。袴下であれば本来「一文字」なのだが、どうも上手くいかない(練習中)。また、浪人結び(片ばさみ)というものもあるが、これは着流し(袴なし)なら良いが、袴を穿くと背中の結び目が真平らになるので、しっくりしない。(このあたりは「男のきもの大全」がとても詳しい)筆者はスーツから居合着に着替えるのに5分程度。やってみれば難しいことは特にない感じである。

もう一つ面倒なのが、袴の始末である。要するにどうやって畳むのかだが、手順としては、まず、丁寧に広げ、襞を揃え、裏返し、中心線を揃えて三つ折にし、二組の紐をクロスさせて形を整えるのだが、この辺りとても面倒である。とは言うものの、紐はともかく襞は丁寧にそろえないと、どんどん崩れていってしまうので、これだけはやらなくてはならない。着流しは今でも割と見るのに、結婚式くらいしか袴姿をみないのはこの辺りに原因があるような気がしてならない。

さて、下着はどうすべきかという疑問もあるのだが、筆者の場合は洋装のままである。褌というのが本当なのだろうが、トイレも面倒なので袴の下は普通にスポーツ用のトランクスやブリーフである。よほど和装に慣れていない限り、越中褌(えっちゅうふん)ということはなかなか無いように思う。女性にも聞いてみたが、やはり下着は洋装のままであるようだ。居合着では前がはだけることもまず無いので、「さらし」を巻く必要もない。

居合着なり、和装をして刀を差すと、なかなか引き締まった気分になる。居合の練習そのものは動きやすい格好に帯さえあれば出来るのだが、やはり袴を穿くと、雰囲気からして違ってくる。居合という武術は最早実用の物ではない(当然)ので雰囲気というのも大事な魅力の要素であろう。こういうところで和装にだんだんと慣れ親しむのも筆者の楽しみの一つである。和装をしてみたい方、居合も含めて古武術などやられてみては、如何だろうか。
[PR]
by seagull_blade | 2004-09-14 11:01 | swordplay